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中小企業の知財戦略=営業秘密、先使用権での保護(2)=

2017年11月09日

前回は「特許出願での保護、営業秘密での保護(1)」として、発明
発掘・発明創作活動によって発掘・創作した発明を、特許出願によって
保護するか、あるいは特許出願せず、営業秘密や、先使用権(特許法第
79条)などで保護するか検討・判断する際のポイントを説明しました。
今回は、営業秘密や、先使用権で保護を図る場合の取り組みを説明し
ます。

A.営業秘密による保護
営業秘密の不正な取得、使用、開示、等の行為に対しては差止請求
や、損害賠償請求が可能です(不正競争防止法2条1項4号~10号、
同法第3条、同法第4条、等)。
そこで、特許出願を行わないと決定した技術やノウハウについて営業
秘密として保護を図る道があります。

B.営業秘密とは
営業秘密として保護を受けるためには、会社が秘密として管理しよう
と考えている情報について、次の3つの条件が満たされていなければな
りません(不正競争防止法2条6項)。
秘密として管理されていること(秘密管理性)
会社が秘密として管理しようと考えている対象(情報の範囲)が従業
員等に対して明確化されている必要があります(認識可能性)。その情
報に合法的かつ現実に接触することができる従業員等からみて、その情
報が会社にとって秘密にしたい情報であることがわかる程度に、アクセ
ス制限やマル秘表示といった秘密管理措置がなされている必要がある
とされています。
有用な営業上又は技術上の情報であること(有用性)
会社が秘密として管理しようと考えている情報自体が客観的に事業
活動に利用されていたり、利用されることによって、経費の節約、経営
効率の改善等に役立つものである必要があるとされています。例えば、
設計図、製法、製造ノウハウなどの技術情報、顧客名簿、仕入れ先リス
ト、販売マニュアルなどの営業情報が営業秘密に該当し得るとされてい
ます。なお、現実に利用されていなくてもよいとされています。
公然と知られていないこと(非公知性)
合理的な努力の範囲内で入手可能な刊行物には記載されていないな
ど、保有者の管理下以外では一般に入手できないことが要求されていま
す。
詳しくは経済産業省のHP「営業秘密~営業秘密を守り活用する
~」で紹介されている「秘密情報の保護ハンドブック~企業価値向上に
向けて~」、「営業秘密管理指針」をご参照ください。

http://www.meti.go.jp/policy/economy/chizai/chiteki/index.html

不正競争防止法の規定に基づいて保護を受けるために必要な秘密管
理措置の程度、秘密管理措置の具体例、秘密情報の漏洩対策、各種規
定・契約等のひな形などが紹介されています。

C.先使用権による保護
先使用権は、他人が特許出願を行った時点で、当該他人の特許出願
で特許請求されている発明の実施(生産、販売、使用など)に該当する
事業や、事業の準備をしていた者(=先使用権者)に認められる権利で
す。先使用権者は、前述の事情の場合で前述の他人の特許出願に特許権
が成立した時であっても、当該特許権に係る特許発明を無償で実施し、
事業継続できます(特許法第79条)。特許出願を行うことで新規発明
を社会に公表した特許権者と、特許出願は行わなかったが自社で完成さ
せた発明を従来から実施していた先使用権者との間の公平を図る観点
から認められているものです。
先使用権は、特許庁などの官庁に届け出ることで認められるもので
はありません。特許権者から特許権の行使(警告書、侵害訴訟の提起な
ど)を受けた場合に、先使用権者が裁判所において先使用権の主張、立
証を行い、裁判所が先使用権の成立を認めたときに、当該特許権者の特
許権に対して効力を有する(=特許発明を無償で実施し、事業を継続で
きる)ものです。

D.先使用権で保護を受けるための証拠収集
先使用権を主張する者は、先使用権の成立が認められるために必要
なすべての事情を立証する必要があります。
すなわち、事業で実施している発明を自社で完成させていたこと、完
成させた発明を会社の事業として実施するべく準備し、事業開始した経
過、事業開始後の実施形式の変更などの履歴、等々を、それぞれの時点
で、それぞれ資料として残しておく必要があります。
特許権の権利存続期間は出願日から20年間を越えないのが原則
です。しかし、「特許出願を行わず、他社から『特許権侵害です』との
攻撃を受けたならば先使用権を主張して抗弁しよう」と考えた技術内容
を、他社が、いつ特許出願するかはわかりません。そこで、上述した資
料に関しては、自社で発明を完成させ、事業化した事業が継続している
等の長期にわたって保存する取り組みが必要になります。
公証制度
先使用権の立証に使用する上述した資料を保存する目的で公証役
場の公証人による認証を得る方法があります。
例えば、上述した資料(書類や、上述した情報を記録したDVDな
どだけでなく、製品などの実施品そのものなど)を箱詰めし、箱詰めし
た内容物についての説明文書(会社代表者の記名、会社代表印捺印の私
書証明)に公証人によって確定日付の付与を受け、それで箱の継ぎ目な
どを隠すように箱に貼りつけ、貼りつけた説明文書と箱との境目に公証
人により確定日付印で契印(割印)を受ける、等のやり方があります。
公証制度については法務省のHPで説明されています。

http://www.moj.go.jp/MINJI/minji30.html

タイムスタンプ
近年、企業等における技術・営業資料の多くが電子文書の形態で保
管され、電子文書管理の重要性が高まってきていること、特許権侵害訴
訟において営業秘密の保有や先使用権を立証するために、いつの時点か
ら、関連する技術・営業資料を作成・保有していたかの証明が重要にな
ることに鑑みて、独立行政法人工業所有権情報・研修館(INPIT)が、
特許庁の協力の下、平成29年3月27日から、電子文書が存在したこ
とを証明する「鍵」であるタイムスタンプトークンを預かる「タイムス
タンプ保管サービス」の提供を開始しています。上述した資料を電子化
し、タイムスタンプを利用して保全を図ることもできます。
詳しくは、経済産業省のHP「タイムスタンプ保管サービス」で説
明されています。

http://www.meti.go.jp/press/2016/03/20170324001/20170324001.html

E.営業秘密、先使用権で保護を図る場合の注意点
特許出願を行わないと決定した技術やノウハウについて営業秘密
で保護を図ろうとする場合、上述した秘密管理性、有用性、非公知性が
満たされているように適切に管理されていなければ、そもそも、営業秘
密としての保護を受けることができません。
また、先使用権で保護を図ろうとする場合、他社が特許請求する発
明をどのように表現(記載)して特許出願し、特許取得するかは不明で
す。このため、将来の先使用権主張に備えて、発明の完成から事業の開
始までの資料などを十分に備えていたとしても、成立した他社の特許権
の効力が及ぶ範囲との関係で先使用権が認められないことがあり得ま
す。
更に、日本国内で先使用権が認められることになっても、その効力
は日本国内に限定されます。海外では、各国の法律に従って先使用権立
証のための証拠収集を行っておく必要があります。
そこで、特許出願による保護にするか、営業秘密、先使用権での保
護にするかの検討、営業秘密、先使用権での保護にする場合の具体的な
取り組みについては弁理士などの専門家のアドバイスを受けることを
お勧めします。

 

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