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知財よもやま話「フランク三浦事件」(MBS「ちちんぷいぷい」出演)

2016年04月19日

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MBS「ちちんぷいぷい」(2016年4月13日)にて専門家ゲストとして出演しました

1.事件の概要

スイスの時計メーカー・フランクミュラーは、商標「FRANCK MULLER」を付した高級腕時計を世界的に販売しており、日本において第14類「時計」を指定商品とする商標「フランク ミュラー」その他の3件の登録商標を取得している。

これに対し、株式会社ディンクスは、日本国内において腕時計に商標「フランク三浦」を付して4000円~6000円で販売するとともに、商標「フランク三浦」について第14類「時計」を指定商品とする商標登録出願を行い、平成24年8月24日に設定登録を受けた。

このため、フランクミュラー側は、特許庁に対し、株式会社ディンクスの登録商標「フランク三浦」を無効とする旨の無効審判を請求した。

 

2.審決の内容

審決において、商標「フランク三浦」と商標「フランク ミュラー」は、外観上「三浦」と「ミュラー」との相違しか存在しないので、「著しく相違することその他の取引の実情等によって、なんら商品の出所に誤認混同をきたすおそれの認めがたいもの」とまでいえない。また、称呼・観念・指定商品も同一または類似である。したがって、商標「フランク三浦」は商標法第4条1項11号に該当するとされた。

また、商標「フランク ミュラー」が著名な商標であるため、商標「フランク三浦」は商標法第4条1項10号にも該当するとされた。

さらに、商標「フランク三浦」の指定商品と商標「フランク ミュラー」の商品「時計」は装飾性が重視される商品であり、その販売場所、需要者を共通にする。このため、商標「フランク三浦」は、他人(フランク ミュラー)の業務に係る商品と混同を生じるおそれを有し、商標法第4条1項15号にも該当するとされた。

さらにまた、商標「フランク三浦」は、商標「フランク ミュラー」が著名であることや、「フランク三浦」がパロディー商品であることを認識しているため、不正の利益を得る目的等をもって使用するものと認められるとして、商標法第4条1項19号にも該当するとされた。

このことから、商標「フランク三浦」は無効にすべき旨の審決がなされた。

 

3.判決の内容

判決において、商標「フランク三浦」と商標「フランク ミュラー」は、称呼において類似する。しかしながら、商標「フランク三浦」が片仮名と漢字に組合せからなるのに対し、商標「フランク ミュラー」が片仮名のみからなるため、外観上明確に区別し得る。また、商標「フランク三浦」が日本人または日本人に関連する人物の観念が生じるのに対し、商標「フランク ミュラー」は外国の高級ブランドの時計の観念が生じるのであるから、観念において大きく相違するとされた。

また、商標の類否は、その商品の取引の実情を明らかにし得る限り、その具体的な取引状況の基づいて判断すべきであるところ、商標「フランク ミュラー」の商品が100万円を超える高級腕時計であるのに対し、商標「フランク三浦」の商品は4000円~6000円程の低価格時計である実情を考慮すると、商品の出所につき誤認混同を生じるおそれがあるとはいえないとされた。

このことから、商標「フランク三浦」を無効にすべき旨の審決は取り消すべき旨の判決がなされた。

 

4.コメント

今回、知財高裁では「フランク三浦」の商標登録が有効であると判断されましたが、「フランク三浦」の文字自体が「フランクミュラー」に類似しないと判断されたに過ぎず、文字盤のデザインまで類否判断がなされたわけではありません。「フランク三浦」の文字盤のデザインに関しては、「フランクミュラー」の文字盤のデザインに類似する部分も多く、一般の消費者であれば両者を混同する虞があると思われます。このため、文字盤のデザインに関しては、「フランクミュラー」側が「フランク三浦」側に対して不正競争防止法で訴えることは十分可能です。ただ、これ以上、問題が長引いてしまうと、「フランク三浦」側は注目されて商品が売れるメリットあるものの(実際に品切れになるまで売れているそうです)、「フランクミュラー」側にとって訴訟トラブルはイメージ上好ましくないことから、果たして「フランク三浦」側を訴えるかどうかは定かではありません。

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