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知財経営のススメ「技術ブランディング」

2015年02月23日

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「Vitamin IP」(Vol.4)より引用

最近、中堅・中小企業から「うちの技術は優れているけど、なかなか製品が売れない」といった言葉をよく耳にすることがあります。高度経済成長以降、日本のものづくり企業は優れた技術を次々に生み出していき、それを製品化することにより収益を上げてきました。しかしながら、ここ十数年の間、中国や韓国などのアジア諸国の追い上げもあって、日本のものづくり企業が厳しい環境下にあります。ただ、日本のものづくり企業の技術力はまだまだ健在であり、アジア諸国や欧米諸国にも未だ引けをとらないものと思われます。では、技術力が高いにもかかわらず、なぜ製品が売れにくくなっているのでしょうか。その理由は数々挙げられるのですが、理由の一つとして、その優れた技術をうまくアピールできていないことが挙げられます。そのような中、技術が優れているだけでは製品は売れない時代になり、その技術をうまくブランディングしていく「技術ブランディング」という考え方が注目されています。

この「技術ブランディング」とは、顧客や取引先にもたらす技術の価値をブランドとして可視化して、それを顧客や取引先にアピールしていくことを言います。例えば、シャープの空気清浄化技術「プラズマクラスター」、ユニクロと東レが共同開発した発熱・保温・速乾技術「ヒートテック」、デュポンの焦げ付き防止のフッ素加工技術「テフロン」、TOTOの光触媒による環境浄化技術「ハイドロテクト」が挙げられます。また、テレビCMでもおなじみのスバルの運転支援システム「アイサイト」があります。さらに、大学関係では、近畿大学の養殖マグロ「近代マグロ」も有名です。これらの技術ブランドは、製品やサービスそのもののブランドでもなければ、いわゆるコーポレートブランドや事業ブランドでもなく、製品やサービスに使用されている技術そのもののブランドです。

では、技術ブランディングを成功させればどのようなメリットがあるのでしょうか。第1に、その名前を聞いただけで優れた技術であることを顧客や取引先に認識させることにより他社技術との差別化を図ることができます。また、自社が取り扱っている各商品に技術ブランドが横串的に配置され、全商品のブランド力を高めることができます。また、顧客や取引先に対して技術の冗長な説明が不要となり、営業などにおいてコミュニケーション力が高まります。また、自社の技術の優位性をわかりやすく伝えられるので、他社とのライセンスやアライアンスも行いやすくなります。また、最近では中小企業も異カテゴリ製品への新規事業を行う場合が多いですが、そこで同様の技術を使用する場合には、既存の技術ブランド力を拡張することができます。また、市場において技術ブランドがしっかり定着すれば、当該技術の特許権等が消滅したあとでも事業を優位に進めることができます。このように技術ブランディングに成功すれば、非常に多くのメリットがあり、自社の事業に対する効果は図りしれません。

ただし、この技術ブランディングは、一朝一夕に実現できるものではないことは言うまでもありません。技術に単に名称を付けて商標登録しただけではいまだ技術ブランドといえる状況にはなく、それを顧客や取引先に対して継続的にアピールしていくことにより構築することができます。時にはコストをかけて大々的に広告をかけていくことも必要になるかもしれませんし、なかなかブランドが定着せずにあきらめたくなるかもしれません。時間をかけてそれらの困難を乗り越えていくことより技術ブランディングが成功します。さらに、一つの製品の悪評から当該技術を使用しているすべての製品、ひいては企業そのものへの悪評へとつながる危険性がありますので、技術ブランディングに成功したあとも技術や技術ブランドのいずれもしっかり管理していくことも重要です。これからのものづくり企業は、技術そのものの向上させることと、それをうまくアピールしていくことの両輪があってはじめて製品や事業が成功していくように思われます。

 

 

 

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